目次
- 1 【海外転職】住民票(転出届)は抜く?そのまま?税金(住民税・健康保険・年金)の支払いについて
- 2 そもそもどういう状況で住民票を抜く必要があるのか?
- 3 住民票(転出届)を抜かず残す場合どうなるの?
- 4 住民票(転出届)を抜くとどうなるの?
- 5 住民票を抜いたその瞬間から「住民税」の支払い義務が無くなるわけではないので注意
- 6 住民票を抜くタイミングとは?
- 7 国民年金には「任意加入制度」がある
- 8 転出届けは自分以外の者でも手続き可能か?
- 9 覚えておきたい「国保・年金・住民税」の要点
- 10 とは言え、一番手厚いのは会社負担の厚生年金・社会保険だということは知っておく
- 11 どちらにしても長期海外赴任の場合は、民間の海外医療保険に加入は必要
- 12 総論まとめ
【海外転職】住民票(転出届)は抜く?そのまま?税金(住民税・健康保険・年金)の支払いについて
本日は海外転職・就職した際に、検討される日本の「住民票」を抜くか抜かないかについて、そのメリットとデメリットを考察していきたいと思います。
結論から言えば、
住民票は抜いても抜かなくてもどちらでも良いもので、本人の自己判断になります。
ただし、抜いた時と抜かない時のメリットとデメリットはある程度知ってから判断したいものです。
そもそもどういう状況で住民票を抜く必要があるのか?
結論から申し上げれば、海外の現地法人に所属するタイミングとなります。
考えられるケースとしては、
- 現地採用として転職または就職する場合(該当:給料現地企業受取のみ)
- 海外赴任で日本法人から現地法人へ転籍の場合(該当:給料現地企業受取のみ)
- 日本法人所属で短期出張ベースで海外に来ていたが、長期赴任となり現地法人へ転籍の場合(該当:給料現地企業受取のみ)
日本法人所属のまま海外転勤となる場合(該当無し:給料日本企業受取)
このように1〜3までのケースで現地企業に所属する場合に、住民票を抜くかどうかの判断が必要になります。
理由としては海外の現地企業へ所属となると、
社会保険→国民健康保険
このように社会保険が解除となり、個人支払いの対象となってしまうためです。
逆に4のように日本法人所属のままで海外転勤の会社員(出張者)であるのであれば、年金(厚生年金)と保険(社会保険)は日本の会社支払のまま継続であるため、住民票を抜く必要は無いかと思います。
正直これが一番海外赴任する者にとっては何も悩む必要がないため有難い待遇ではないでしょうか。
長期赴任の場合1年〜3年など年単位での海外赴任がケースとして多いでしょうから、その際は住民票を外すかどうか検討する必要があるでしょう。
住民票(転出届)を抜かず残す場合どうなるの?
住民票を抜かない(転出届けを出さない)場合についてです。
税金
- 「住民税」の支払い義務が発生する
- 「国民健康保険」の支払い義務が発生する
- 「国民年金」の支払い義務(強制加入)が発生する
❏住民税:年間238,000円(月額:19,833円)
❏国民健康保険:年間270,900円(保険料:30歳~34歳の平均年収は403万円)
❏国民年金:年間196,920円(令和元年度:月16,410円)
例えば、年齢30~34歳で年収約400万で考えた場合、この3つの合計は705,820円になります。
住民票(転出届)を抜かなければ、この金額の支払いが必要になってくることになります。
出典:おかねアンサー https://okane-answer.jp/
出典:国民年金保険料|日本年金機構 https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/20150313-02.html
出典:https://www.city.matsudo.chiba.jp/kurashi/hoken_nenkin/
出典:Career Picks https://career-picks.com/average-salary/30age-average-salary/
出典:年収別の住民税 https://juuminzei.com/meyasu/nensyu.php?kingaku=400%E4%B8%87%E5%86%86
メリット
- 自治体からの公共サービスが受けられる。(地方自治体で行われる子供の無料予防接種等)
- 選挙に参加出来る。(選挙権が有り)
- 印鑑証明書の取得が出来る。
- 国民健康保険が利用できる(一時帰国時にいちいち区市町村の役所・役場に行き発行する必要が無くなる。)
- 新規で銀行口座とクレジットカードが作れる。
- 国民健康保険に加入されているので、一時帰国に再度健康保険に再度加入する必要が無い。医療保険等が適用される。
- 年金受給額が減らない
- 住宅ローン控除を受けられる
デメリット
・「住民税」「国民健康保険」「国民年金」を支払わなければならない
住民票(転出届)を抜くとどうなるの?
反対に、住民票を抜くとどうなるのでしょうか。
税金
- 住民税の支払い義務が無くなる
- 国民健康保険の支払い義務が無くなる→その反面、住民票が無いと国民健康保険に加入が出来ない
- 国民年金の支払い義務が無くなる(任意加入)
※先ほどの例であれば、年間70万円程の支払いが無くなるかたちになります。
メリット
- 「住民税」「国民健康保険」「国民年金」を支払わなくて済む。数十万円単位での税の節約になる。
- 国民年金について支払いは任意加入となる。
デメリット
- 国民健康保険へ加入出来ない。(※「住民票」と「国民健康保険」「住民税」は紐付いている。)
- 一時帰国に再度国民健康保険に再度加入する必要がある。面倒なのは、例えば一時帰国タイミングで医者に行きたいケース。一度区市町村の役場へ行き国民健康保険を発行。出国前に再度「国民健康保険」を提出する手間がかかる。
- 住民票を残す場合は住民税が発生する。
- 地方自治体で行われる子供の無料予防接種が受けられない。
- 選挙に参加出来なくなる。(選挙権無し)
- 印鑑証明書の取得が出来なくなる。
- 新規で銀行口座とクレジットカードが作れない(理由:日本の本籍地が日本でなければならない)
- 年金受給額が少なくなる。
- 住宅ローン控除が受けられない。
住民票を抜くことはイコール国民健康保険に加入できないことを意味します。
つまり、住民登録と国民健康保険は紐付いているということですね。
※ただし、「免許証」と住民登録は紐付いていないので更新可能ですのでご安心下さい。
住民票を抜いたその瞬間から「住民税」の支払い義務が無くなるわけではないので注意
注意点として欲しいのが、住民税です。住民票を抜いてもすぐには税の支払い義務が無くなるというわけではありません。いくつかポイントを記載します。
- 「住民税」は自分が1月1日現在、居住している区市町村が課税対象となる。
- 「住民税」は前年の1月1日〜12月31日までの年間所得に対して課税される。
- 「住民税」は課税期間は翌年の6月から翌々年の5月までが課税期間になる。
例)2019年1月1日~12月31日の年間所得に対して、翌年の2020年6月~翌々年2021年5月の間に住民税が課税される計算。
例えば、2019年11月1日に海外転籍が決まり、住民票を抜きたいとする。
その場合は、2019年12月31日までに住民票を抜かなければ、本来2020年6月~翌々年2021年5月までしか支払わなくてよかった住民税が、2021年6月~翌々年2022年5月まで(+1年分)住民税を支払わなければならないことになる。
1月2日に住民票を抜いたとしても遅い。
そのため、住民票を抜くのであれば、転籍が決まったその年末までには抜かなければならないので注意が必要です。
住民票を抜くタイミングとは?
住民票を抜けば、国民健康保険は脱退となり、と国民年金は強制加入ではなくなります。
国民健康保険なら「月末の前日」がおすすめ
特に国民健康保険に言えることなんですが、
その際には、「月末の前日」がおすすめです。
なぜなら、「月末の前日」であれば、その月の保険料が徴収されないためです。
つまり、国保は日割計算はせず月割計算するため、国民健康保険は月末に加入されているかどうかで、その月の保険料支払いが決まるのですね。
例えば、月末の1日前である11月29日に転出届けを出して国民健康保険を抜いたとしましょう。
その場合は、保険料は発生なしです。しかし、11月30日の月末最終日に抜いた場合はどうでしょうか。
それは一ヶ月11月分の支払いが必要になります。
逆に言えば、例えば極論、月末最終日に住民票を入れた場合、たった1日しか加入していないとしても、その一ヶ月の国民健康保険の支払い義務が発生してしまうということです。
国民年金保険料はいつでも良い
結論から言えば、国民年金も国民健康保険と同じように月末に加入しているかどうかで支払いが決まるのですが、唯一違う点は、老後の年金受給に関わってくるかどうかということです。
なので、出来ることなら支払っておくべきもので、支払って損はないでしょう。
例えば、国民健康保険の方を月末の1日前に脱退となり、その月の支払いがなくなったとしても、国民年金の場合では単純に老後に受け取る年金額が減るだけです。
なので、国民年金保険料の場合には切り替えタイミングはお任せです。
国民年金・国民健康保険支払いは形式上退職の次の日から
もし、退職や移籍などで月の途中で契約が終了する場合、厚生年金はそこで終了ですが、その月の途中の翌日から月末までに国民年金を支払う必要がありますので注意です。
国民年金には「任意加入制度」がある
住民票を外すと国民年金は強制加入ではなくなり、任意加入となります。
しかし、当然ですが支払いをなくせばその分老後の年金受給額も減ります。
それは嫌だという方には、国民年金の任意加入制度がおすすめです。
任意加入制度について
60歳までに老齢基礎年金の受給資格を満たしていない場合や、40年の納付済期間がないため老齢基礎年金を満額受給できない場合などで年金額の増額を希望するときは、60歳以降でも国民年金に任意加入をすることができます。(厚生年金保険、共済組合等加入者を除く)ただし、申出のあった月からの加入となり、遡って加入することはできません。
海外転出などでその期間年金支払が無くなり、不安という方にはおすすめです。
しかし、申し出があった月からの加入になり、遡って支払いは出来ないので注意です。
転出届けは自分以外の者でも手続き可能か?
結論、可能です。
理由としては、手続きが出来る人というのは、
- 転出(出国)をする本人
- 世帯主
- 転出をする本人と同一世帯の者
- 委任状を用意した代理人(役所や役場に用意されている「委任状」が必要)
となっているからです。
どこで手続きするの?
現在の住民票がある市区町村の役所や役場の窓口で可能です。
必要なもの
- 運転免許証やパスポートやマイナンバーカードなどの「本人確認書類」※郵送の場合はコピーでも可。
- 印鑑
- 役所や役場の窓口に置いてある「転出届」に記入し提出
補足
- 海外への転出の場合は「転出証明書」は発行されない。(国内のみ)
- マイナンバーカード(個人番号カード)は返納となる。
覚えておきたい「国保・年金・住民税」の要点
- 国民健康保険:月末日に加入しているかどうかでその月の支払いが決まる。多めに支払ったら払い戻し請求出来る。転出届けを出して住民票を抜けば脱退となる。(その月もしくは)翌月から支払いは必要なし。月途中で退職手続きなどをした場合には、退職日の次の日から支払いが必要になるので注意。(社会保険→国民健康保険)
- 国民年金保険料:月末日に加入しているかどうかでその月の支払いが決まる。年金受給を減らしたくなければ任意加入制度があり。転出届けを出して住民票を抜けば強制加入から任意加入になる。月途中で退職手続きなどをした場合には、退職日の次の日から支払いが必要になるので注意。(厚生年金→国民年金保険料)
- 住民税(都道府県税+市区町村税):去年1年の所得税により、今年6月から来年5月までの住民税が決まる。後から来るので注意。
とは言え、一番手厚いのは会社負担の厚生年金・社会保険だということは知っておく
厚生年金は国民年金に上乗せされる年金のため、会社と自分でダブル支払いの年金保険料です。
なので老後の年金受給額も国民年金と比べると当然受取りも夫婦で3.4倍くらい違います。
令和2年4月分(6月15日支払分)からの年金額は、法律の規定により、令和元年度から0.2%の増額となります(在職老齢年金の支給停止調整額については、変更ありません)。
なお、令和2年5月分以降の年金額が全額支給停止となる方などについては、5月15日にお支払いします。
令和2年度(月額) 令和元年度(月額) 国民年金(老齢基礎年金(満額)) 65,141円 65,008円 厚生年金※(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額) 220,724円 220,266円 ※平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)43.9万円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
国民年金は月額16,000円程に対し、厚生年金では所得に応じて支払額も上がるので、年収が600万とか700万であれば月に10万以上支払うケースも出てくる。そうなれば、当然戻る額も大きい。
全体の中には30万円近く年金だけで受け取っている人も少なからずいるようですが、平均値をとると13万〜25万このあたりが多いようです。
参考:厚生年金の平均月額は、男性「18万円」女性「9万円」 – シニアガイド
どちらにしても長期海外赴任の場合は、民間の海外医療保険に加入は必要
住民票を抜く抜かないについて考察を進めてきましたが、結局どちらにしても民間の医療保険は入っていた方が良いでしょう。
- 1〜3ヶ月ベースでの出張「海外現地⇔日本」であれば、クレジットカード付与の「海外旅行保険」で対応するという方法がある。
- 3ヶ月以上の海外赴任の場合、別途現地の民間の「海外医療保険」に入らなければならない。
- 「海外旅行保険」は日本にいる時にしか加入出来ないため、現地で加入するのには向かない。
- 日本で住民票を抜く場合、国民健康保険も加入しないことになるが、その際にはこの「海外医療保険」は必須となる。
- 現地法人の社会医療保険等もあるだろうが、社会保障の充実してない国の場合、外国人向きではないとう理由もあるのでおすすめはしない。別途追加の「海外医療保険」を加入を勧める。
- 住民票を抜かない場合で且つ3ヶ月以上の海外赴任の場合でも、「海外医療保険」を加入を勧める。3ヶ月以内であればクレジットカード付与の「海外旅行保険」で対応するという方法があるが、3ヶ月以上になると日本の国民健康保険では一部しか還付されないケースがある。※日本で医療を受けるのとは訳が異なる。
長期海外赴任の場合、以上の理由から住民票を抜くか否かとは関係なく、海外医療保険には別途加入をおすすめ致します。
総論まとめ
改めて住民票を抜くかどうかについて考察をしてみました。
個人的には、結構悩みどころなのですが、日本へ一時帰国が多い方であれば、抜かないで置いたほうが良い気もします。
しかし、年に1回多くても2度くらいしか帰国されない方、1週間も滞在しないという方は抜いた方が良いかもしれませんね。
クレジットカードや銀行口座が作れないというのはデメリットですが、既にいくつも持っている方であれば別に問題なしです。
年金は受給のことも検討し、支払いを続けたとしても健康保険と住民税で年間合計約50万円も支払うのはかなり大きいです。
※逆に国民健康保険や国民年金については、住民票を抜いた月から納税免除になる。